第一夜 博多太郎源

 

福岡県の博多駅から5〜6分歩いたところに太郎源はある。この店は天平堂の今林君に教えてもらった。博多にはおいしいお店が沢山ある。もつ鍋、やきとり、水炊き、魚料理…しかしながら、店の良し悪しは味だけでは決まらない。大将の人柄、店の雰囲気、値段、おもてなしなど総合的に判断されると思う。
美味しくても高い店、美味しくてもくつろげない店、美味しくても無愛想な店など様々で、全てを兼ね備えた店は本当に少ない。しかし、太郎源にはその全てがバランスよく揃っている。実に稀有な店だ。それ故にいつも地元客で賑わい外国人観光客の姿はほとんどない。それは本質的な商売を長年続けている証に他ならない。
地元客の口コミで自然に広がり、一度来たら何度も通ってしまう。気づいたら常連になってしまっているのだ。この店の名物料理は?ウリはなんだ?と問われても答えに困る。何故ならばどの料理も美味いからだ。この道20年以上の大将は季節の旬の食材を本当に上手に使う。だから、季節ごとに行く度に毎回違う料理が出てきて、それが毎回旨いのだ。和食の店なのだが、大将の向学心はとどまることを知らずフレンチの技法まで取り入れてくる。
三階建の店はゆったりとしていて、大将の趣味である古美術品がたくさん飾られている。勿論店内はいつも満席御礼だ。しかし、行き届いた心配りと導線管理で満員のはずの店内で他の客の声はすれどカチ合ったことがない。見えない心配りだと感心する。太郎源は博多で一番好きな店だ。これからもずっと通い続けることになるだろう
今夜も美食に乾杯