表参道駅を降りて少し歩いた路地に増田屋はある。この店は私が駆け出しの店員時代から足繁く通い続けている老舗だ。かの有名な世界的指揮者の小澤征爾も常連でよく来るという。増田屋の蕎麦は白蕎麦で、はっきり言って特別なものではない。しかし、毎日食べても飽きが来ない素朴で丁寧な味がする。食べやすい細さにきちんと切り揃えられ、しっかり氷水で締められた蕎麦は毎回スルリと喉を通り、胃に落ちる。喉越しが抜群なのだ。

 

 

夜になると、板わさやもつ煮込み出汁巻きなどのメニューが追加される。これもまた、ちゃんとうまい。やはり特別にうまいと言うわけでもないのだが、何故だかまた食べたくなるのだから不思議だ。やはりそれは、心地の良い店内、気の利いた元気な店員、クセのない爽やかで丁寧な味付け、庶民的な価格、便利な立地。こう言ったものの総合的評価なのだろうと思う。

 

蕎麦屋のカレーはなぜかうまい。たまには冒険してミニカレーを追加してみる。メニューにはないのだが、快く臨機応変に応じてくれるのも増田屋の親しみやすさだ。出汁がきいていて旨い。来るたびに駆け出しの二十代の頃を思い出す。あれからはや十数年、変わってしまったものも、変わらないものもある。変わらないのは増田屋の蕎麦と、私の古美術への情熱とお客様への誠意である。

 

今日も美食に感謝。ご馳走様でした。